こんにちは。カンです。
中国在住で、日本ゲームの中国語翻訳・ローカライズをしている者です。
普段から中国のゲームコミュニティにいるので、
Steam中国市場の話は自分にとっては身近な話なのですが、
日本の方と話していると、
「中国って海賊版が多いイメージあるんですけど、ゲーム売れるんですか?」
とよく聞かれます。
結論から言うと、売れます。
今回は公開データをもとに、中国Steam市場の規模感を紹介します。
※規制のことを心配する方も多いと思いますが、ざっくり言うと、
Steamの審査と中国政府の審査は別物です。
中国国内で配信禁止のゲームでも中国のプレイヤーは問題なく購入できています。
具体的に話すと長くなるので、詳しくはまた別の記事で。
1.Steamユーザーの「3人に1人」は中国語
Valve社がDevcom 2025で出したデータによると、
Steamの中国語ユーザーは全体の34.6%。
英語の33%を上回って、トップになっています。
これは登録者数ではなく、
実際にゲームを買って遊んでいる人の言語設定から出した数字です。
2025年11月時点で、Steamの月間アクティブユーザーは約1.32億人なので、
ざっくり4,500万人以上が中国語ユーザーです。
ちなみに第三者の統計だと、
Steamの歴代売上Top20のうち11タイトルで、
中国が地域別売上1位だそうです。
2.大型タイトルの数字
規模感を掴むために、
まず大型タイトルの数字を見てみます。
『黒神話:悟空』
2025年烏鎮サミットでの公式発表によると総販売2,800万本、海外30%。
逆算すると中国国内だけで約1,900万本です。
『It Takes Two』
Josef Fares氏いわく、総販売2,300万本の「半分が中国から」。
『Cyberpunk 2077』
発売前の予約段階で、中国が世界1位。
(CD Projekt RED公式発表)
日本産の高難易度アクションも強いです。
Steamレビューの簡体字中国語比率で見ると:
『SEKIRO』は約50%、『仁王2』は約56%、『NINJA GAIDEN 4』は約54%。
『エルデンリング』『モンハン』『バイオ』あたりは、
中国だけで数百万本、というのはもう珍しくない時代です。
3.中国市場の転換点:『太吾絵巻』
「転換点」というと『黒神話:悟空』を思い浮かべるかもしれませんが、
あれは主に中国大手がAAA開発に投資する流れを作った作品です。
中国の買い切りゲーム市場そのものの転換点は、もう少し前にあります。
実は2018年ごろまで、
中国のプレイヤー自身も「中国で買い切りゲームは売れない」と思っていました。
海賊版が当たり前だったこと、
そして「買い切りゲームを遊ぶ人口自体が少ない」と信じられていたからです。
それを覆したのが『太吾絵巻』です。
2018年10月、Steamの同時接続ランキング上位に突然現れて、
欧米プレイヤーの間で「謎の中国語ゲーム」として話題になりました。
日本ではあまり知られていないかもしれませんが、
中国のゲーム市場を語る上では外せない転換点です。
中国語のみ対応。
当時まだ一般的ではなかったアーリーアクセス形式。
そして「武侠シミュレーション」という、中国国内でもニッチなジャンル。
それでも発売1年で200万本(公式発表)を達成しました。
ここから中国市場の本格的な成長が始まった、と思っています。
その後も100万本超えの中国産インディーが続いています:
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- 『鬼谷八荒』(2021年):680万本
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- 『My Time at Portia』(2019年):340万本
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- 『Warm Snow』(2021年):300万本
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- 『Chinese Parents』(2018年):300万本
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- 『しまった!美人に囲まれた!』(2023年):200万本
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- 『Dyson Sphere Program』(2021年):200万弱
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- 『飢えた子羊』(2024年):100万本
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- 『スルタンのゲーム』(2025年):100万本
※ちなみに『My Time at Portia』と『Dyson Sphere Program』は海外売上の比率が高め。
それ以外は中国国内での販売が中心です。
4.海外インディーの中国売上
では海外のインディーはどうでしょうか。
販売地域の内訳は常に公開されるわけではないので、
ここではSteamレビューの言語比率を参考にします。
(レビュー数=売上ではありませんが、目安にはなります)
『Slay the Spire』
2019年時点で総販売150万本、うち30%が中国(公式発表)。
2026年現在は総販売1,000万本を突破。中国語レビュー比率は37%で、言語別1位。
『Dead Cells』:37%(同じく1位)
『Hollow Knight』:23%
『Stardew Valley』:20%
『Hades』:20%
『Celeste』:19%
ローグライク、メトロイドヴァニア、農場ゲーム、高難度プラットフォーマー。
題材もジャンルもバラバラですが、どれも2〜4割が中国語圏からです。
「中国向けの題材だから売れた」というより、
Steam上に中国語ユーザーの母数がある、という見方のほうが近いと思います。
では、日本発のインディーはどうでしょうか。
5.日本インディーの中国売上
『NEEDY GIRL OVERDOSE』
CEDEC2023での発表によると、当時の総販売120万本のうち51%が中国から。
日本国内は10.8%で、中国が日本の約5倍です。
2025年12月時点で総販売300万本に達しており、この傾向は続いていると思われます。
『魔法少女ノ魔女裁判』
キャラクターの内面を掘り下げる作風で、
欧米よりも東アジア受けの内容です。
2026年1月時点のSteamレビュー比率は、中国語が72%、日本語が15%、英語が2%未満。
日本では一定のファン層がいる作品ですが、販売比率で見ると中国市場がはるかに上回っています。
『ENDER LILIES』
全プラットフォームで累計200万本超。
Steamレビュー比率は中国語35%、英語26%、日本語4%。
メトロイドヴァニアは英語圏で人気のジャンルですが、それでも中国語がトップです。
どれも日本の開発者による作品です。
中国市場を狙ったわけではなく、結果として中国が最大市場になっています。
6.中国語対応のタイミング
中国語対応を考えているなら、
発売と同時に対応することをおすすめします。
理由は、中国市場特有の情報の流れ方にあります。
中国のゲームコミュニティでは、中国語対応の有無にかかわらず、
「このゲームが発売された」という情報自体を共有する習慣があります。
10年前まで発売時に中国語対応していないのが当たり前だったため、
「対応言語に中国語があるかどうか」は必ず触れられます。
つまり、中国語がなければ「非対応」として紹介され、
多くの人は「対応してないか、スルー」で終わります。
欧米や日本では、
自国語に対応していないゲームは「まだ発売されていない」扱いになり、
ローカライズ後に改めて紹介されます。
しかし中国では、発売時にすでに一通り紹介されているため、
後から中国語を追加しても再び取り上げられることは難しい。
同じ翻訳コストをかけるなら、
発売時に間に合わせたほうがリターンは確実に大きくなります。
最後に
今回の話をまとめると:
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- Steamユーザーの34.6%は中国語圏。英語を抜いて1位。
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- 大型タイトルだけでなく、インディーでも中国が最大市場になるケースは珍しくない。
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- 日本産インディーも例外ではなく、むしろ国内より中国で売れている作品がある。
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- 中国語対応を考えているなら、発売と同時がベスト。後から追加しても再び注目されにくい。
「中国向けに作る」必要はありません。
ここで挙げた作品はどれも、気づいたら中国が最大市場だった、
というケースです。
ただ、中国語対応があるかないかで、
同じSteamストアでも見える市場の規模がまったく変わります。
中国展開について迷っていることがあれば、お気軽にどうぞ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
日本語はネイティブではないため、不自然な表現があればご指摘いただけると嬉しいです。
