こんにちは。カンです。
前回は中国Steam市場の規模について書きました。
今回は、よく聞かれる「規制」の話です。
「中国ってネット規制が厳しいイメージがあるんですけど、ゲーム届くんですか?」
結論から言うと、届きます。
Steamで販売する限り、中国のプレイヤーは普通に購入できます。
この記事では、なぜそうなのかを説明します。
1.中国国内の審査とSteamは別物
まず前提として、中国国内で正式にゲームを販売するには、
政府の審査を通過し、「版号」と呼ばれる許可番号を取得する必要があります。
審査の対象となるのははPlayStation、Nintendo Switch、モバイルアプリ、
そして中国資本のPCプラットフォーム(WeGame)などです。
審査は厳しく、時間もかかります。
大手でも1年以上待つことがあり、
そもそも通らないジャンル(ホラー、過度な暴力表現など)もあります。
ただし、これはSteamには適用されません。
Steamはアメリカの企業であるValve社が運営しており、
ゲームの審査もValve社が独自に行っています。
中国政府の版号制度とは無関係です。
つまり、Steamに出すだけなら、
中国の審査を気にする必要はありません。
2.「Steam China」という別物がある
実は中国には「Steam China(蒸汽平台)」という、
中国市場向けの別プラットフォームがあります。
これはValve社と中国企業の合弁で運営されており、
中国国内の審査・版号が必要です。
ただ、現状ではほとんど使われていません。
中国のプレイヤーはほとんど国際版のSteamを使っています。
Steam Chinaを使っているのは、
基本的に『Counter-Strike 2』で中国国内の低pingサーバーを必要とするプレイヤーくらいです。
3.中国からSteamにアクセスできるのか
「中国はネット規制が厳しいから、Steamにアクセスできないのでは?」
と思う方もいるでしょう。
実際のところ、問題なく使えています。
ただし、状況は少し複雑です。
Steamストア(ゲームの購入ページ)は基本的にアクセスできますが、
Steamコミュニティ(フォーラム、レビュー、ワークショップなど)は
地域やプロバイダによって不安定なことがあります。
とはいえ、これは実質的な障壁にはなっていません。
中国のSteamユーザーの間では「回線最適化サービス」(いわゆる「加速器」)が広く普及しています。
Steam、Epic、その他の海外ゲームサーバーへの接続を安定させるもので、
オンラインプレイ時のみ有料(それも月額百円~数百円程度)。
多くのプレイヤーが当たり前のように使っています。
(VPNとは違い、匿名化や暗号化の機能はありません。あくまで回線最適化サービスです。)
つまり、中国のプレイヤーにとって、ネットワーク面でのハードルは実質ありません。

▲ 中国で広く使われている「加速器」の画面例(『荒野行動』の開発元が提供)。
Steamストアや中国国内サーバーのゲームへの接続は無料で、海外サーバーでのオンラインプレイ時のみ有料となる。
4.「いつか規制されるのでは?」という懸念
「今はアクセスできても、いつか規制されるのでは?」
そう心配されるのも無理はありません。
たしかにまだ懸念点が残っています。
ただ、「お金の動き」を見ると、実態が見えてきます。
中国内外の投資家たちは、
Steamが今後も中国市場の主要チャネルであり続ける、という前提で動いています。
680万本を売り上げた『鬼谷八荒』は、
最初から版号を取得せず、Steam専売として開発・運営されています。
2021年発売ですが、版号を取得したのは2024年、しかもモバイル版のみ。
つまりPC版は、3年以上にわたってSteam一本で事業が成立しています。
さらに大型タイトルでも同じ傾向があります。
『明末:渊虚之羽』は開発費数十億円規模の大作ですが、
パブリッシャーは中国企業ではなく、イタリアの505 Games。
『昭和米国物語』も、PVが話題になった後、
米国のGalaxy Interactiveなどから追加出資を受けて規模を拡大しました。
どちらもゴア表現やキャラクターデザインの時点で、
中国国内の審査を通すことは想定されていません。
最初からSteamでの販売を前提とした企画です。
ポイントは、こうした投資判断を下しているのが中国企業だけではない、ということです。
海外のパブリッシャーや投資ファンドが、
カントリーリスクを検討した上で、数十億円規模の出資を決めている。
「いつ消えるかわからない市場」に、そういう判断はしません。
5.支払い方法も問題ない
「決済はどうしてるの?」という疑問もあるかもしれません。
Steamは中国の主要決済手段であるAlipay(支付宝)と
WeChat Pay(微信支付)に対応しています。
中国のプレイヤーは、クレジットカードがなくても、スマホで簡単に購入できます。
むしろ日本よりも決済のハードルは低いです。

▲ 中国リージョンの決済画面。Alipay(支付宝)を選択している。
※中国リージョン以外では Alipay とWeChat Payが表示されない。
6.中国で販売禁止になる可能性は?
それに関しては、一般的なインディーゲームであれば、
まず心配する必要はありません。
中国リージョンで購入できなくなる(リージョンロック)ケースは存在しますが、
それは通常、すでに知名度のあるタイトルに限られます。
また、よく混同されるのが「販売禁止」と「配信禁止」の違いです。
たとえば『Dead by Daylight』は、
ホラー・ゴア表現のため、中国国内での実況配信が禁止されています。
しかし、Steamでの購入は問題なくできます。

▲ 『Dead by Daylight』のストアページ
※中国リージョンで購入できないタイトルは、ストア検索に表示されません。
ストアページが開ける=購入可能です。
仮にリージョンロックがかかったとしても、
購入済みのプレイヤーは引き続き正常にプレイできます。
強制返金になることもありません。
まとめ
今回の話をまとめると:
・中国国内の審査(版号)はSteamには適用されない
・Steam Chinaは存在するが、ほぼ使われていない
・中国のプレイヤーは国際版Steamを普通に使っている
・接続の問題は「ゲーム加速器」で解決済み
・AlipayとWeChat Payで簡単に購入できる
・中国で販売禁止になる可能性は非常に低い
つまり、規制面でのハードルは実質ありません。
前回の記事で書いた通り、Steamユーザーの3人に1人は中国語圏です。
規制を理由に中国市場を避ける必要は、基本的にありません。
中国語対応を検討中の方は、発売と同時に対応することをおすすめします。
(理由は前回の記事で書いています)
中国語ローカライズや中国展開について気になることがあれば、お気軽にどうぞ。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
日本語はネイティブではないため、不自然な表現があればご指摘いただけると嬉しいです。
